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総合医療でがんに克つ 2018年01月号 Vol.115

総合医療でがんに克つ 2018年01月号 Vol.115

便は体内からの手紙 便秘外来のがん先手必勝医療

患者さんと医師が同じ土俵に上かって病気と向き合う医療を

医療法人健心会えんどうクリニック 遠藤剛院長
  いま病院では患者さんの話をあまり詳しく聞くこともなく、まずは血液検査をし、あるいはCTやMRI、エコー、内視鏡カメラなどによる画像診断を優先する傾向にあります。  「しかし医療者にとってその前にまず大事なのは、口の前の患者さんの体の状態に五感で触れることです。  どの方向にどのような異常や苦痛が起こっているのかを大きく把握することで、患者さんと同じ土俵に立つことができるのです。 病気は医者が一方的に治すのではなく、患者さんと医療者が力を合わせて立ち向かう---そう納得できたときにはじめて、高い精度の検査画像は闘病の心強いナビゲーターとして本来の治療効果を発揮するのではないでしょうか。  これはがんの場合でも変わりません」  福鳥県・会津若松市で胃腸科、肛門科、内科、外科を標榜する。『医療法人健心会 えんどうクリニック』遠藤剛院長(58歳)の言葉には少しの迷いもありません。 検査画像の前に、まず病状の苦痛と不安を訴える来院患者さんの訴えをしっかり聴き、患者の身になって支えよう、と。言っているのです。 えんどうクリニックにはちょっと珍しい、『便秘外来』があります。  「便秘の多くは食生活や生活習慣の乱れ、ストレスなどで大腸の轜動運動がうまく行われないため起こる"機能性便秘"で、生活習慣や食生活の改善指導でかなり解消できます。  しかし"器質性便秘"といって、大腸がんやポリープが大きくなって便の通りが悪くなっているなど---便秘の裏により重大な病気が隠れている便秘があるのです。 たまたま受診した"便秘外来"で、大腸がんが発見される例も珍しくないのです、便秘を甘く見てはいけませんね」。

便は体内からの手紙です

  「便は体内からの雄弁な手紙です」---遠藤剛医師の名言です。 雪の研究者として有名な北海道大学の中谷宇吉郎博士の"雪は空からの手紙です"という名言からいただいたのだ、と遠藤医師は言いますが、それにしても"便は体内からの手紙"はやっぱり真理です。  「口から食べたものは食道を通り胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸と消化吸収の旅を経て便として肛門から排泄されるわけですが、そこには通過してきた臓器の情報が多様なレベルで刻みつけられているのです。 前がん状態の大腸ポリープや大腸がんそのものからの下血あるいは便潜血といった重大サインが、混在して認められることも少なくないのです。  患者さんの便からの情報は、いま現在の体の中の"生帖報"なのです。 医療者にとっては宝の山であり、そこから引き出せる情報には治療のヒントが無尽蔵に詰まっています。  しかし画像検査の画像は、患者さんの臓器の"影"にしか過ぎないのです」  便が伝えてくる"生の体内情報"を、医者としての経験を総動員し、あるいは画像検査によって補強もしながら見誤らないよう最大限に読み取る努力を尽くし、それを治療に活かさなければならないと遠藤医師は言いきります。  この取材のあるタイミングで、遠藤剛医師はこれまでに自身が蓄積してきた便の状態とそれが意味するところを、一覧のような形で纏めて明らかにしてくれました。 体からの手紙の中身と言えるのかもしれません。 がんに関わりがある部分のみ紹介しておきます。 これらは″影″ではなく病気の実在そのものですがら、トイレの際誰でも自分の目で確認できるはずです。 こういう便が続くようなら、すぐに病院へ行くべきです。 ○肛門部がらの赤い下血・赤い便‥赤い血は出血して間もないことを示している。  大部分は肛門が直腸付近がらの出血でイボ痔がキレ痔が多い。だがときに、肛門のすぐ奥の直腸がんである場合もあり、痔と混同して見逃すと手遅れになることも珍しくない。  痔では赤い血がぼたぼた垂れて出ることが多いが、少ないときには拭いた紙に付く程度のこともあり、赤い粘液状態の血液が便に混じり紙に付く直腸がんと混同されやすい。  専門医は直腸に指を入れて探る(直腸指診)ことで、直腸がんを発見できる。指1本で直腸がんの約60%に触れることができるのだ。 さらにその奥の大腸にがんができていることもあり、注意深く調べる必要があります。 ○黒い便・タール便‥食道、胃、十二指腸、小腸など上部消化管における潰瘍やがんの可能性も。 ○茶褐色の便‥大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性胃腸炎(吐き気、下痢を伴う)、大腸憩室炎、抗生物質起因性大腸炎を疑う。 ○白っぽい便‥肝臓がん、胆管がん、胆のうがん、膵頭部がんの可能性あり。

えんどうクリニックは奥行きが深く広い駐車場を持つ

早期発見・早期治療から病診連携へ---患者のメリット第1に日帰り手術も

診察中の遠藤医師 よく患者の話を聞く
  遠藤医師のクリニックでがんが見つかるのは1年間50人?60人で、そのうち便秘外来で発見される大腸がんは、15?20人です。  遠藤医師のがん治療の大原則は「早期発見・早期治療」です。「しかし日本人のがん検診受診率は、世界でもきわめて低い。 いまは自治体の健康診断にも、胃がん(胃内視鏡)、大腸がん(便潜血検査や内視鏡)、肺がん(χ線検査は進行してからでなければわかりにくいので、CT検査が望ましい)の検診があり、胃内視鏡検査を施行します。 検査費用もあまりかかりません。 いずれにしても画像検査がいい。血液検査ではわかりにくいがんなのです」できれば40歳からは毎年受けることをお勧めします。 見つかってもほとんどが早期発見ということになる。  もし経済的に許すなら自費で10万円くらいかかりますが"PET"による画像検査を受けていただきたいと遠藤医師は言います。  「胃、大腸のような中が空洞になっている臓器は"管腔臓器"といって、その中の病変は見つけにくいのですが、CTやMRIでも見つからない病気の発見につながります。  どんな病気もそうですが結局早期発見なら治療費も健康保険で安価に済みますし、がんが発見されたとしても手術で完全に取り除くことができますから、再発の危険性も少なく、最終的にはメリットが大きいのです」。  発見したがんのうち遠藤医師が手術するのは、胃、大腸の早期のがんで、えんどうクリニックのスタッフが完治まで面倒を見て治すことができる範囲内の患者のみ選んで手術を行います。  発見時すでに相当進行してしまって大掛かりな手術が必要な患者さんや、ESD(深い粘膜切除)手術が必要な難しい患者さん、そして長期入院が必要な患者さんは、スタッフが揃っていて大掛かりな手術ができる提携病院を紹介することにしています。  えんどうクリニックの人院ベッドは、10床しかないのです。  患者さんが受けるメリットを第1にということで、会津若検市では「病診連視(病院と診療所の連視)」と「診診連視(患者を専門の診療所に託す)」が盛んに行われています。  参考までにある年の記録を紹介してみます。  えんどうクリニックが会津若松市の人病院に紹介した患者・約800人、専門の開業医に紹介した患者・約500人、合計約1300人。  逆に他院からえんどうクリニックヘ紹介されてきた肛門科などの患者は約500人に達します。  会津若松市医師会では、相当開けた考え方が浸透しているようです。  患者の利益第1なのです。  「肛門鏡や大腸内視鏡検査などで痔の疾患あるいは人腸ポリープと確定されれば、うちでは外来手術または内視鏡による日帰り手術(デイサージェリー)で対応できるようになっています。  患者さんには午前中に来院していただいて、昼に内視鏡手術をし、夕方には帰宅できるのです。  通常の手術では1?2週間程度の人院が必要なのにウソみたいでしょう。  医療費も3分の1程度で済みますし、何よりも患者さんの社会生活が通常通り続けられることで喜ばれます」。

胃の内視鏡検査

漢方薬で抗がん剤の副作用を抑制する

大腸の内視鏡検査
 がんがある程度進行してからの手術では、主病巣のがんを完全に切除したとしても、すでにがん細胞が体のどこかに転種してしまっている恐れが否定しきれません。そこで術視に進行がんでは抗がん剤投与が行われることがあります。  当然患者さんはすべてではありませんが抗がん剤の副作用に悩まされることになります。  がん細胞を叩く治療ですが、どうしても正常細胞にまでダメージが及んでしまうのです。  分子標的薬などでがん細胞だけに毒性が発動するよう工夫していますが、うまくいかないこともあります。  遠藤医師は抗がん剤に痛めつけられた正常細胞の機能を、漢方薬によって修視し元気に引き戻そうと、すでに平成6年に『えんどうクリニック』を開業した当初から西洋医学とはまったく異なる"養生"という方向から作用する漢方医学の勉強会をひらき、薬局の協力も得てスタッフとともに学んできました。  やがて『漢方外来』も立ち上げ、体に本来備わっている自己修復機能を多面的に発動させることにより、その年齢や状況に合った体内環境につくり替えながら、生きやすく生きていく東洋の知恵を自らの血肉としてきました。  その経験の中で遠藤剛医師が基本的に使う漢方薬として選んだのが次にあげる4種でした。 ○十全大補湯‥全身の生命機能賦活、延命効果、免疫賦活、新陳代謝促進、食欲増進。 ○補中益気湯‥消化吸収促進、タンパク合成促進、中枢神経系興奮、血行促進、肝庇護、免疫増強。 ○六君子湯‥胃がん、胃潰瘍、胃炎、消化不良改善。 ○人参養栄湯‥手術後、大病検の衰弱、体力増強、疲労回復、健忘、虚弱体質改善。  「いずれも免疫機能を高め、全身的な活力をバランスよく上げようというもので、医学的エビデンス(効果の医学的証明)もきちんとあります。  保険適用の漢方薬ですがら安く、汎用性も広くて多くの方にも安全で処方しやすい漢方の名処方と言われる薬です。  私は患者さんの用途に合わせてこの中のいくつがを組み合わせて処方します。  西洋医学の薬と一緒に飲んでもほぼ問題ありませんので使いやすい。特に前の2つは、細胞を元気にする働きが強いので、以前がら手術の後によく使われてきた漢方です」

17人のスタッフ全員で患者さんを支える

漢方薬が抗がん剤治療の副作用を改善させたら、抗がん剤治療の予定回数が完遂でき、がんが消えた!

  進行性大腸がんを「手術」と「抗がん剤」と遠藤剛医師の「漢方薬」処方の組み合わせで克服した、61歳の男性のケースを紹介して本稿を閉じようと思います。  「宇津井健司さん(61歳 仮名)は中間管理職のサラリーマンです。  ある日の午後猛烈な腹痛に襲われ、会社のトイレに駆け込み苦しい排便をしますが、流そうとしたとき目に入った便を見て異様な感じを受けました。  それまで見たこともないような茶褐色の便の表面に気持ち悪い粘液がべったりとへばりついていたのです。  痛みも引がないためすぐに近くの大病院へ駆け込み、夕方までががった検査の結果"進行性大腸がん・ステージ3B″と診断されます。」  忙しさにかまけて会社のがん検診を受けておらず、知らない間に進行していたようです、実際にはがん細胞がリンパ節にも少し入っていたと言います。  すぐに入院して直腸の上"S状結腸部分切除手術"を受けます、そのあとすぐに抗がん剤治療が開始されますが、強い副作用に悩まされます。  吐き気がひどく食欲もない。  「その段階で主治医がら私のところへ漢方薬を使って何とが副作用を軽減できないか、と相談があり"十全大補湯"を飲んでいただくことにしたのです。  免疫力を高めとにかく元気が出ますし延命効果もある。  手術の後併用する外科医が多いので1日3回飲んでいたたきました、するとやはり1ヵ月目あたりがら全身的に少しずつ元気が出てきたので、ここぞとさらに六君子湯も併せて飲んでいたたくことにしました、すると表情にも明るさが見えてきて、きつい抗がん剤で途中脱落する人が少なくないのですが彼は何とか12回の抗がん剤治療をやり遂げることができたのです。  抗がん剤治療が予定通りできたせいでしょうか、宇津井さんのリンパ節転移も縮小していきました。  実は肝臓にも3cm大の転移巣らしきものがあって心配されていたのですが、それもやがて1cmになりましたから、やはり抗がん剤冶療が計算通り完遂できるというのは、メリットが大きい。  漢方薬が転移巣を縮小できるとは思いませんが、宇津井さんを抗がん剤に耐えられるように支えた功績は間違いなくあったというべきでしょう」。  あの日からちょうど1年経った今、宇津井健司さんは肝臓の影も消えて再発の気配もなく、とてもお元気で職場復帰しているそうです。  これからは年1回程度の検査でいいということです。  遠藤剛医師に漢方の協力を頼んで、そのメリットを実感した主治医はこんなことを言っていたそうです。  「これからはこういう漢方薬の効果的なサポートがあれば、抗がん剤をより有効に使用でき、患者さんにとっては福音ですね。」  遠藤剛医師は宇津井さんのこのケースを漢方の学会である「日本東洋医学会」で発表すべく、その準備に入っているということです。  漢方医療も、胃腸系分野の医療も、がん医療も、こうして少しずつ新しい経験を積み重ねることによって進化してゆくのでしょう。