福島県会津若松市一箕町亀賀藤原417-3
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遠藤剛(えんどう・ごう)
1959年福島県生まれ。
帝京大学医学部卒業。
帝京大学第二外科、千葉玄々堂君津病院、帝京大学附属市原病院外科、社会保険中央総合病院大腸肛門病センター、竹田綜合病院外科肛門利・を経て、1994年健心会えんどうクリニックを開設。
日本外科学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医、日本消化器内視鏡学会所属。
雑誌インタビュー・執筆情報 の検索結果
CLINIC magazine 2004.3月号

1.はじめに

過敏性腸症候群(IrritableBowelSyndrome:IBS)は機能性消化管障害(FunctionalGastrointestinalDisorders:FGID;Rome)のなかの1疾患であり、消化器疾患のなかでも頻度の高い疾患である。

IBSは、便秘や下痢などの便通異常および腹部症状(腹痛、腹部膨満感、腹鳴など)の緩解・再発を慢性的に繰り返すが、これらの症状を説明するのに十分な器質的病変が腸管の内外に認められず、その症状は大腸を中心とした下部消化管の機能異常に基づいていると考えられている。
また、その症状の発現や増悪にはストレスが深く関与しているともいわれている。

IBSの原因は不明な点が多いが、腸管の運動異常、知覚過敏などの素因に、過労、睡眠不足、不規則な食生活、運動不足など不適切な生活習慣、タバコ、アルコールなどの嗜好品、薬物などの身体的ストレスや家族、仕事、学校における問題などの精神的ストレスが加わり発症すると考えられている。

IBSは古くから知られているが、ストレスの増加や食生活の変化などにより近年患者数が増えている。

2.疫学

欧米では一般人口の14%にIBSの症状が認められ、そのうち約20%が診療を受けているといわれている。
また、一般住民を対象とした調査ではAgreusらは12.5%、Tallyらは17%、Drossmanらは17.1%、Jonesらは21.6%と報告している。

2002年に日本においてRome兇亮遡篁罎鰺僂い銅損椶靴芯敢困任蓮一般内科を受診する患者の31.0%がIBSであると報告されている。

IBS患者は軽症が70%を占め、その多くがプライマリーケア医を受診するといわれており、当院においても、日常診療のなかでIBS患者にしばしば遭遇し、近年その頻度が増加していると実感している。

実際に当院を受診した外来患者におけるIBSの実態調査を実施したところ、外来で消化器症状を訴える患者の約15%がIBSと診断された。

3.診断

前述の通り、IBSは便秘や下痢などの便通異常および腹部症状(腹痛、腹部膨満感、腹鳴など)の緩解・再発を慢性的に繰り返すが、これらの症状を説明するのに十分な器質的病変が腸管の内外に認められない症候群である。
したがって、IBSの診断には十分な問診と基本的な検査によって器質的な異常所見がないことを確認することが重要となる。

IBSの診断基準としては、これまでにManningの診断基準、NIH診断基準などさまざまな基準が提唱されてきたが、近年では国際的な統一基準としてRome郷巴粘霆爐広く普及している(図1)。
また、日本で独自に策定されたものとしては、B.M.W.クラブ診断基準がある(図2)。

当院では腹痛などの腹部症状や便通異索などの消化器症状を訴える患者に対して、問診にてチェックシートとアンケートを活用して診断を行っている(図3、図4)。
いずれも非常に簡易であり、日常多忙な診療のなかでも簡単に活用できるメリットがある。
図1Rome挟霆
下記の3項目中、2項目以上を満たす腹痛または腹部不快感が、過去12ヵ月間の合計で12週間以上(連続とは限らない)ある。
(1) 排便によって軽快する。
(2) 排便回数の変化に伴って発症。
(3) 便性状の変化に伴って発症。
診断の参考事項
排便回数の異常(研究目的では>3/日、および<3/週)
便性状の異常(兎糞/硬便または軟便/水様便)
便排出の異常(排便困難感、便意切迫、残便感)
粘液の排出
ガス症状または腹部膨満感
サプタイプ分類(下痢型、便秘型)については別途定める。
図2 BMW診断基準
下記の´△両評が1ヵ月以上くり返す。
また、症状を説明する器質的疾患がない。
腹痛、腹部不快感あるいは腹部膨満感がある。
便通異常(下痢、便秘あるいは交替性便通異常)がある。
便通異常には以下の1項目を含む
a. 排便回数の変化
b. 便性状の変化
器質的疾患の除外のためには、原則として下記の検査を行う。
a. 尿、糞便、血液一般検査
b. 注腸遺影または大腸内視鏡
図3便秘の鑑別チェックシート
あてはまるものに○をつけて下さい。
弛緩性便秘チェック
便意はないが、おなかの不快感がある。
便が硬くて太い。
市販の下剤を飲むと具合がよくなる。
食物繊維を多く食べるとよくなる。
ストレスはほとんどない。
→このうち3つ以上あてはまれば、弛緩性便秘の可能性が高いといえます。
けいれん性便秘チェック
しばしばおなかの痛みや不快感がある。
トイレに行くとおなかの具合がよくなる。(1の症状がよくなる)
便が硬くてコロコロしている。
残便感がある。
おなかが張るのにお通じがない。
ストレスがたまっている。
→このうち3つ以上あてはまれば、けいれん性便秘の可能性が高いといえます。
過敏性腸症候群
図4アンケート内容
質問1
下痢もしくは便秘が続いている(もしくは繰り返す)
質問2
お腹が痛い
お腹が張っている
お腹がゴロゴロ鳴る
ガスがたまった感じがする
  上記の症状が1つ以上ある
質問3
〜5
便に血が混じることがある(痔出血以外で)
最近やせてきた(体重が減少してきた)
夜中にお腹が痛くて目覚めることがある
質問6
ストレスを強く感じると下痢や便秘がよりひどくなる

4.IBSの治療

IBSの治療において最も大切なのは医師と患者の信頼関係を構築することである。
まず、IBSの病態を患者に十分に説明すること、そして以前は「神経質」「原因不明」などとして片付けられてきたが、適正に治療することが必要な疾患であり、その治療が可能であることを患者に伝えることが大切である。

次に生活指導・食事療法が挙げられる。
規則正しく偏りのない食生活、十分な睡眠、適度な運動、排便習慣をつけることの重要性を患者に理解してもらうことである。
食事は、下痢型では脂肪・繊維などの摂取は腸管の運動を促進させるので避けるよう指導し、逆に便秘型では繊維の摂取を勧める。
また、ストレスは症状を悪化させる大きな要因であり、時間的にゆとりを持ち、リラックスできる環境をできるだけ作ることが重要である。

薬物療法としてはポリカルボフィルカルシウム(ポリフル)が有用である。
高分子重合体で、便中の水分を整えることで便性状を改善するというユニークな薬剤である。
下痢状態と便秘状態の両方に効果を示すため、2002年5月に厚生労働省精神・神経疾患研究班によって作成されたIBS治療ガイドラインにおいても、基礎薬として推奨されている。

また、血中に吸収されないので安全性も高く、高齢者にも安心して投与できるという利点もある。
PCをベースとして下痢、便秘、腹痛などの症状にあわせて下剤や整腸剤などを併用する。
以下に処方例を示す。
便秘型
ポリフル 6Tまたは3.6g 分3
<軽症>
マグラツクス 6T 分3 追加
<中等症>
セチロ 9T 分3 追加
<重症>
∃ーデル 就寝前1T 追加
下痢型
ポリフル 6Tまたは3.6g 分3
ミヤBM 3T 分3

5.おわりに

IBSは消化器疾患のなかでも頻度が高く、今後ますます増加することが予想されている。

当院では外来において簡単なアンケートを実施しているが、下痢や便秘で悩んでいる患者は意外に多く、プライマリ・ケア医においてもIBS患者は多くみられることを確認している。

また、下痢・便秘患者は市販薬で自己治療していることも多く、誤った治療は後の重症化を招き、治療が困難になりかねない。

日常診療において積極的に診断を行い、早期に対応することが患者のQOLの改善にもつながる