河北新報朝刊コラム「河北春秋」

河北新報 H30.12.1
 ちょっとした違和感だった。 職場に近い、えんどうクリニック(会津若松市)を訪ねたら、「痔痩ですね。切らないと治らないよ」。 院長の遠藤剛さん(59)に手術してもらった。  2週間の入院中、ふと気付いたのは術後の痛みが薄れた頃。 院内の壁には病気の解説がびっしり。 院内報、遠藤さんが新聞や雑誌に投稿した記事のファイルもあちこちにある。  大病院でがん治療に携わり、胃、大腸、肛門に特化して地域と新たな向き合い方を始めたのは25年前。 ベッド10床。医師は遠藤さん1人。手術もこなす。数少なくなった有床診療所だ  「何でも聞いて」と会話を通し、患者の納得を重視する。説明は分かりやすい。1日の外来患者は100人を超す。 「話す時間が少ないのは申し訳ない」と、院内で健康セミナーを毎月開き、病気の話をする。 無料で誰でも参加でき盛況だ 胃が痛ければ、コンビニでも薬が買える時代。 症状が治まれば良いで済ませず、「なぜなぜ問答」をしてほしいと遠藤さん。 なぜ病気になったのか。病の仕組みに照らせば、改めるべき生活習慣が見え、治療や予防につながると説く  退院時に寄せ書きを頂いた。 看護師さん、栄養士さんらの一言アドバイス。 「聴診器 心の音も聞いている」。 遠藤さんはそう書いてくれた。(2018.12.1)