日本医事新報NO.4292乳児の便秘への対応乳児(特に6ヵ月未満)の便秘に対応する薬剤の種類、注意事項、また浣腸の是非、薬剤量について。併せて急性、慢性別の対応、一般的注意について。 (1)食事療法について母乳だけの赤ちゃんだと、母乳は吸収されやすく、食物残渣が少ないので便が少しずつしか作られず、数日便通がないこともある。ミルクの場合でも、飲む量が少ないと便はなかなか作られない。 離乳食を始めたばかりの便秘は、離乳食が始まることでミルクの量が少なくなり、水分が不足ぎみになることが考えられる。 また腸内 細菌叢に割合ビフィズス菌が少ないことも原因と思われる。 したがって、腸内細菌叢をビフィズス菌優位にもっていけば腸内運動が非常によくなることから、ビフィズス菌を多く与えてほしい。 市販の乳酸飲料(ヨーグルト)でもよいし、腸内にあるビフィズス菌を活性化するオリゴ糖(メイオリゴ)という糖でもよい。 オリゴ糖は腸内で代謝されると有機酸類ができて、これが腸の蠕動運動を刺激して排便を促し、便秘を改善してくれる。 頑固な便秘には、麦芽糖エキス(マルツエキス)が有効である。 低月齢の頃なら「の」字を書くようにお腹をマッサージしたり、オリーブオイルに浸した綿棒で、先端を1mほど肛門の中に入れて刺激する方法なども効果がある。 最後に、離乳食の時間、生活リズムなどを整えることも大切である。 (2)薬剤の選択について緩下剤は、便が貯留してから大量に使用するよりも、毎日決まった量(毎日ないし2日に1回、自発便があるように用量を症例ごとに検討して決定する)を与えるほうがよい。投与は長期にわたることが原則であるが、毎日のように排便がある状態を続けると、次第に緩下剤を減量できることが多い。 慢性便秘に対しては、酸化マグネシウム、マルツエキス、ピコスルファートナトリウムがよく使用される。 急性便秘は、食物や生活環境に起因する一過性単純性の便秘と、腸閉塞などの通過障害による器質的な症候性の便秘があるが、「一過性のものは薬物投与まで必要としない場合も多く、器質性のものは基礎疾患の治療が大切である。 浣腸剤は、溜まってしまった便を出すのに効果的である。 直腸に 硬便が貯留している場合、緩下剤の服用により腹痛がより強く出てしまうことが多い。 このような場合は、まず浣腸で貯留した便を出した後に、薬物治療を開始することが重要となる。 母乳性の便秘の場合は時々浣腸で排便させておけば、離乳食の進み具合とともに改善してくることが多い。 食事療法 および排便の習慣づけなどの一般療法のみでは効果を認めない時に、それぞれの病態に応じた薬物療法を実施していく。 適切な下剤を選択するには、排便障害の原因を正しく診断し、さらに各々の下剤の作用機序と特性を熟知する必要がある。 そして個々の症例に応じて下剤を選択し、用法・用量を加減して使用する。 漫然と下剤を汎用することは避け、規則正しい便通が得られた場合には次第に減量し、下剤からの離脱を図る。 一般に、乳児、特に新生児から続いている便秘は器質的疾患を伴っている可能性が高く、2歳以降に始まったものは機能性便秘であることが多い。 日常最も多くみられるものは機能性便秘であり、1日1回の規則正しい排便習慣をつけることが根本治療となる。 その手助けとして便の軟化、増大を目的とした下剤である塩類下剤(酸化マグネシウム)や糖類下剤(麦芽糖エキス、ラクツロース)など を1日2〜3回に分けて服用し、排便に伴う疼痛をなくすことが重要である。 すでに停滞している硬い宿便に対しては、経口的に用いる多くの下剤は無効であり、緩下剤の内服により腹痛がより強く出てしまう ことが多いため、グリセリン浣腸、ビサコジル(テレミンソフト)坐薬といった外用薬で貯留した便を出した後に薬物療法を開始することが重要である。 また、大腸刺激性下剤であるピコスルファー下ナトリウム液剤は無味・無臭の液剤で必要なだけ使え、副作用も少ないという点で、機能性便秘の中でも弛緩性便秘によく使用される。 さらに、最近では漢方薬も注目されている。 便秘症に対しては、一般的に緩下剤が用いられているが、大建中湯や小建中湯といった漢方薬にも便秘症に有用なものがある。 漢方薬は緩下剤に比べ味や臭いが独特であるため、コンプライアンスの面で問題はあるが、症状の悪化を来すことがないため、便秘症に対して使用してみる価値のある薬剤であると考えられている。 |