福島県会津若松市一箕町亀賀藤原417-3
TEL0242-33-0700
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水曜 午前8:30〜午前12:30まで
午後 休診
土曜 午前8:30〜午前12:30まで
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休診日 水曜日午後・日曜・祝祭日
外来待合室の壁には色彩豊かに医療・健康・疾病に関するさまざまな掲示物が貼られている
遠藤 剛 氏
えんどうクリニック
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患者の安全管理を実践する

専門性の高い有床診療所として、三年前から安全管理マニュアルを整備

情報提供で患者の理解を促す

福島県の内陸部、磐梯山と猪苗代湖の西に位置する会津若松市を中心とした会津地方の医療圏は、病床充足率140%に近い過密医療圏である。

1994年11月、この“医療激戦区”に外科・肛門科・胃腸科・内科を標榜して開業した「医療法人健心会えんどうクリニック」(10床)は、患者に分かりやすい医療と情報公開を旗印に地域密着型医療を推進してきた。

同クリニックの外来でまず目に入ってくるのが、受付カウンター上部にある大画面のプラズマディスプレイだ。
医療・健康情報が、たとえば「Q:巻き爪ってなあに?」「A:陥入爪と言われる日常診療で良く見る疾患です。
主に足の親指の爪が圧迫、外傷、先天異常などのために、外側の皮膚に深く食い込んでいる状態です」といった具合に分かりやすく、しかもクオリティーの高い内容で表示されている。

それをながめる待合室の壁には色彩豊かにデザインされたパッチワークよろしく、医療・健康・疾病に関するさまざまな掲示物が貼られている。
病棟に隣接した「談話コーナー」の壁にも、同様にさまざまな掲示物が分かりやすく配置されている。
写真(16頁)でもわかるように、じつに読みやすく、何よりも目に楽しい。

院長の遠藤剛氏は、そのねらいを次のように話している。

「患者さんにとって地域の病院や医院こそが健康や病気を考え、勉強する場であってほしい。
診療を待つ貴重な時間を、こうした情報を得る場として活用し、日頃の疑問や不安を私たちスタッフに遠慮なく問いかけるきっかけにして欲しいのです」

住民を対象にした個別カウンセリングも

そのような患者からの発信を受け、地域住民とのコミュニケーションを醸成する場としてもうひとつ、隔週木曜日の午後7時から開催される「健康相談会」がある。
遠藤院長をはじめとするスタッフによる一般講義が終わった後、希望者を対象に個別カウンセリングが行われる。
ときには夜遅くまでかかることもあるが、院長をはじめスタッフは十分な手応えを感じている。

こうした医療情報の開示や患者教育は、医療の事故防止には欠かせない。
患者が主体的に医療に参加することで、治療や処置の危険性を医療機関と共有し、相互チェックが働くようになるからだ。

一方、スタッフの教育にも力を注いでいる。
「毎朝8時から30分間の朝礼を行い、申し送りをするとともに、問題点を話し合います。

2週間に1度の合同カンファレンスでは、それぞれの職長が自分の感じたことをぶつけ合い、同じく2週間に1度の勉強会では私が個々の職員に与えたテーマについて、それぞれの職員から発表してもらっています」このような姿勢もあって、周辺の医療機関からの信頼を得ているのである。

「地域の医療機関との病診連携や診診連携もスムーズで、たとえば2社1年度は病院に854件、専門性の高い診療所へ356件、合わせて1200件を超える紹介をしています。私が以前勤務していた、この地区最大の竹田綜合病院からは逆に毎月6〜7人ほどの紹介があります。」

これらのデータは、地域の医療機関との濃密な連携のあらわれであり、換言すると同クリニックそのものが胃腸科・肛門科を中心にした専門性の高い医療機関として、地域医療に欠かせない存在となっていることがわかる。

病院で起こる医療事故は診療所でも起こり得る

「地域の医療連携体制のなかで、このクリニックがはたすべき役割をたくさんの患者さんに認識していただき、われわれは日々の診療に追われながらも、それなりの成果をあげてきました。そのように理解し、また自負もあります。

ただ、医療事故に関していえば、病院で起こることは、われわれのような診療所でも同じように起こり得る、そのような気持ちを強くしたのが4年前です。
以前からアメリカの医療環境を分析する中でリスクマネジメントについて研究をしてきて、とくに患者さんの安全管理と事故防止ということから、早急に具体策を講じなければだめだと思っていました。」

具体的なきっかけは、1999年1月に横浜市大病院で起きだ手術患者取り違え事故”である。
その後もつづく同様の事故報告の数々に衝撃を受けるなかで、遠藤院長は事故防止対策マニュアルの作成に着手する。
ともに働く看護師とマニュアルづくりの検討を進め、起こり得る事故を想定し、対処法を具体的に構築するなかで、2000年7月、7項目にわたる事故防止対策(マニュアル)がカンファレンスでまとめられた。

マニュアルは見直しして実用性を増す

まとめられたマニュアルは次のとおりだ。

)秧貉故、⇒液事故、C躰融故、じ〆沙故、ケ‘盍鏡、ν震事故、Т擬垳軫(のちに転倒・転落事故、放射線事故が加わって9項目となった)「この段階での基本認識は、ミスは起こるはずがないといったタテマエ的な考えを捨てることでした。

ビューマンエラーは必ず起こり得る。もちろん、それは病院もクリニックも同じです。
同時にヒヤッとしたりハッとしたりしたミス、いわゆるヒヤリ・ハット事例やニアミスを報告するインシデント・レポートも作成しました(左画像)。
事故の経過を具体的に記入し、危険度を判定し、対応策とその後の患者の反応を明記する。
その情報をスタッフにオープンにし、カンワァレンスにおいて全員で検討することにより、マニュアルの重要性も再認識され、事故防止への意識も高まってきました。」
インシデント・レポートの提出件数は初年度が7件、翌年度4件、そして2年半が経過した今年初めに1件の合計12件である。

なお、マニュアルは2002年2月に見直しを行って実用性と具体性を増し、今年に入ってからは新たに「転倒・転落事故」と「放射線事故」の対策を加えて9項目となった。

マニュアルの具体的な内容は、たとえば「転倒・転落事故防止」(下;左画像)にあるように「トラブル」と具体的な「事故防止対策」が基本になっており、必要に応じて事故防止のための「チェックリスト」(下:右画像)かつくられている。

患者安全管理体制整備の義務化には即座に対応

有床のクリニックである同院では2002年10月施行で義務化された医療の安全管理体制整備を、それからさかのぼること3年前から具体化に向け着手していたことになる。

指針の整備(マニュアル作成を含む)や院内報告制度の整備(インシデント・レポート制度の確立)だけでなく、次にあるように安全管理委員会の設置(事故防止に関するカンワァレンスの開催)や職員研修の実施(院内外での研修)も行われている。

「昨年10月の義務化を契機に、うちのマニュアルやインシデント・レポートのコピーを分けてほしいという電話がふえましたよ。
リスクマネジメントという用語についてもセーフティマネジメントのほうがいいのではという声も聞きました。
しかし、現段階では言葉の問題じゃないでしょう。

あくまでも、具体的な方策を講じることです。前向きに、具体的にね。
その意味では、今回の義務化に対する1日10点の未整備減算、これではいささか後向きかなと思います。」
遠藤院長は、リスクマネジメントを実効あるものにするためのポイントを次のようにまとめている。

ヾ浜者が事故防止に対する強い意志を全職員に向けて示す
¬榲・対象範囲・活動内容を職員にわかりやすい形で明文化する
事故やインシデントについてオープンに議論できるように院内の風土を改める(なお、同院ではインシデントに対する個別のペナルテイなど、処遇面でのマイナス評価を課さないことを明言している)
ぅ螢好マネジメントに関する組織(専門委員会)を設け、責任者を明確にする(同院ではスタッフ全員によるカンファレンスが設けられ、看護師の部長・副部長の2人のうちいずれか1人が交替で委員会の責任者となっている)
グ緡鼎亮舛鮓上させるために院内の他の活動と連携させること(同院では胃腸・肛門疾患のクリニカルパスを作成し、そこにリスクマネジメントの成果をもりこんでいる。また、院外研修にも機会があるごとに職員を参加させている)

「とにかく病院で起こることは診療所でも必ず起こり得る…。
クリニックのスタッフには、“明日は我が身”ということを忘れないよう強調しています」