プライマリーケア医とは「患者が最初に接する医療の段階。
それが身近に得られ、適切に診断処置され、以後の療養の方向についての正確な指導が与えられる医師」のことである。
「ホームドクター」「開業医」「かかりつけ医」などとまだ日本では名称は一定していない。
米国のファミリードクターのような広範な臨床能力を備えた「プライマリーケア」専門医は、現在わが国にはまだ少ないと言わざるを得ないのである。

 病気によっては、どの科を受診してよいのか分からないことも多々、あると思われる。
私も病院勤務時代に待合室で 迷われている患者さんに呼び止められた経験もある。

 例えば、しびれや目まい、あるいは立ちくらみといったものは、いろいろな科にまたがる事も多い。
最近では、専属のナースが受付に待機している病院も少しずつではあるがふえてきた。
つまり、ちょっと相談してみる、また、たとえ電話相談だけでもいいといった病気とはいえないほどの症状のときは、よろず相談的に応じてくれる窓口があったら、患者さんにとってはどれほど心強いだろうか。

 また、医師の方からも「どの科に診てもらうのが適切か迷うときに、患者さんを紹介しやすく、助かる」といった意見もある一方、「総合診断という概念は分かるし、必要性も認めるが一つの専門領域でもそれを究めるのにー生かかっでも足りないくらいなのに、何もかも扱うようなプライマリーケア医の存在など医療のこれだけ発達した今、無理ではないのか」と言った疑問の声もあるのも事実である。

 今や世の中は専門家崇拝の時代であり、医学生や若い研修医もこぞっで専門医になる事を希望じている。
しかし、全疾患の九割以上はプライマリーケア領域の疾患だとする研究もある。
 そもそもわが国には当初、ブライマリーケア医としての体系的に養成された医師がいなかったといえる。
最近になり大学病院に総合診療科が増えてきた。

背景には、医学の専門文化があまりにも進んだため、「臓器を診て病人を診ない」医師が増えてしまったことの反省もある。
 三十年間高血圧で通院していたのに、胃がんの発見が、遅れ亡くなった」といった事があるのも事実である。
 また、病気は身体疾患のみならず、ストレスからくるうつ病過敏性腸症候群、また、神経症の患者が身体症状を訴えて多くの診療期間を受診している。
しかし、この様な患者への対応が不充分なために"ドクターショッピング"をし、重複検査が行われている。
 これは大変な医療費の無駄づかいでもある。

これらの患者を上手にマネジメントできるプライマリーケア医の育成が、今の世にもとめられているといえよう。