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がんを考える

あれは十数年前、入局して5?6年たったころであろうか、医学部時代の同級生の伯父が入院して、受け持ち医になった。

検査が進むにつれて胃がんと診断がついた。
抗がん剤の併用療法が教授や病棟医長から指示された。

その当時、抗がん剤の治療はかなり大量投与しなければそれほど効果を期待できず、病巣を縮小したとしても食欲不振、貧血、下痢その他全身状態の悪化など副作用が問題であった。

そこで、大学出たての新来医師のわたくしと友人は、顔を合わせて相談したのである。

「わたくし個人の意見をいうと、抗がん剤の投与もよくいって数カ月、悪くすると数日で副作用のため、急に悪化する傾向にあるので、なんとかこのままで元気な間にできることをさせてあげて、一生をおくらせてあげたらと思うのだが」というと、友人は「実をいうと、伯父は現在独身で、長い間面倒を見てきた彼女がいる。
この伯父は、わたくしを自分の子のようにかわいがってきたので、できるだけ思いのままにさせてあげたい」という。
あとで聞いた話だが、入院したまま、時どきその彼女と小旅行をしたり、ほほえましいような余生を約一カ月近く送ったそうだ。

その間、回診では「抗がん剤の効果はどうかね」と教授に尋ねられ、投与しないことがわかると厳しい口調で怒られもしたが、友人との約東を守って「知らぬ顔の半兵衛」をきめこんでいた。

その後、患者は外出もできなくなり、寝たきりの生活が続き、数カ月後に死を迎えた。

患者は死に際して「先生、ありがとう。先生のおかげで入院中に思い残すことなく、最後の人生を楽しむことができた。
死を迎え、なに一つ思い残すことがないのを幸せに思います。
患者の望むのは、寝たきりの一分一秒の延命ではなく、短くも充実した生活を送ることだということを忘れないようにしてください。
そういう人間の心を理解できる医者になってください。
わたくしは天国から先生を見守っておりますよ」という言葉とともに、息を引きとった。

わたくしは、これで良かったのか、抗がん剤を投与して細々とはしても、もう少し長生きさせた方が良かったのだろうかと何度となく反問した。

患者の四十九日も過ぎたころ、友人と友人の父親(患者の弟)と三人で、わたくしの慰労を兼ねて、伯父さんの追悼の宴が開かれた。

この時、友人の父親から「どうも型破りな兄であったが、人生の最後を思いのまますごすことができたことは、ほんとうに感謝にたえない」と、友人ともどもわたくしの杯に酒を涙ながらに満たすのであった。

そして余興に身振りも入れて、いつ終わるともしれず「戦友」を歌い続けるのだった。
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