先生の医療記事新聞集
痔 うっ血部切除が基本
読売新聞 H22.4.4
内痔核 注射で縮小の新療法
肛門科は、痔の治療の専門家だ。痔は初期であれば、ウオーキングなど血行を良くする運動や食生活の改善、座薬や塗り薬の使用で回復が期待できる。
だが、痔核(いぼ痔)が肛門の外に飛び出したり、痛みがひどかったりした場合には手術が必要になる。
読売新聞は2010年1月〜2月、肛門科医らによる内痔核治療法研究会のALTA(内痔核硬化療法)実施医療機関830施設に、09年1年間の治療実績などをアンケートし、430施設から回答(回答率52%)を得た。
一覧表には結紮切除術が30件以上(該当のない県は最多の施設)の214施設を掲載した。
肛門は、直腸の末端から便の出口に至る3、4センチの管で、括約筋の力で締まる。
直腸の末端にあるクッションのような組織が、排便時のいきみ過ぎなどで血流が滞った状態(うっ血)になると痔核になる。
痔核には、内痔核と外痔核がある。
クッション部分にできるのが内痔核で、それより下にできるのが外痔核だ。
内痔核と外痔核がつながったものも多い。
結紮切除術は、痔核の代表的な手術だ。痔核を切開し、うっ血部分を取り除く。
日帰りで行う診療所もあるが、病院では1週間ほどの入院が一般的だ。
社会保険中央総合病院(東京都新宿区)大腸・肛門科部長の山名哲郎さんは「手術後、数日は排便時に痛みがあるが、我慢すると便が硬くなり、更につらくなる。
便を軟らかくする薬などを適切に使うなど、安心して手術後の排便ができる入院治療を勧めたい」と話す。
手術の10日〜2週間後に、多量出血が起こることもある。
札幌いしやま病院(札幌市)副院長の樽見研さんは「1%以上の確率で多量の出血は起きる。
緊急時にすぐに対応できる施設が安心」と話す。
これに対し、ALTA治療は、内痔核を注射で縮小させる新しい治療法だ。痛みが軽く回復が早い。
しかし外痔核には用いることができず、取り残すと再発率が高まる。
このため内痔核にはALTA、外痔核には結紮切除術と、使い分ける施設が増えている。
痔核の治療では、肛門に差し入れた筒状の機械で内痔核周辺を切除、縫合する治療「PPH」も一時注目された。
しかし、腸管に穴が開くなどの深刻な合併症や再発率の高さなどから、実施数は減っている。
岩垂純一診療所(東京都中央区)所長の岩垂純一さんは「治療の基本は結紮切除術。
この経験が豊富な施設が好ましい」と話す。
痔ろうは、頻繁な下痢などで直腸と皮膚の境から細菌が侵入し、ウミがたまった状態だ。
放置するとがん化する恐れもある。
トンネル状にできた細い管を切開し、ウミを出す手術が最も有効だ。
痔ろうの場所によっては括約筋を大きく傷つけてしまうため、トンネルをメスでくりぬく括約筋温存術などの方法もある。
一覧表には医師の人数(カッコ内はうち女性医師の数)も掲載した。
肛門科以外で手術する医師も含めて回答した施設もある。