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大腸がんと痔 -「福島民報連載」

福島民報 R4.12.5

内視鏡検査で確認を

県医師会員
遠藤 剛 (会津若松市・えんどうクリニック院長)
 肛門の病気は主に「痔核(じかく)」「裂肛(れっこう)」「痔痩(じろう)」の三つに分かれます。痔核のうち、内痔は出血が主で痛みがなく、外痔は出血や痛みがあります。
 痛みと出血のあるのが裂肛、肛門の周りにうみがたまり、うみが出た後に管が肛門の奥に向かいできるのが痔痩です。
 また、まれですが痔と似た肛門がんということもあり、注意が必要です。もちろん、肛門から出血する病気の中には大腸がん、大腸憩室炎や難病の潰瘍性大腸炎等もあります。
「痛くないのに痔なんですか」と聞かれることがありますが、それが肛門の内側(腸側)にできる内痔です。慢性化すると痔核は徐々に大きくなり肛門の外に脱出、肛門ポリープができます。症状が悪化すると血液が混ざったり、粘液のような物の付いた便が出たりすることがあります。

 痔核と裂肛、肛門ポリープはがん化しませんが、痔痩はまれにがん化することもあり要注意です。一方、大腸粘膜に隆起する組織を大腸ポリープといいます。肛門に近い直腸やS状結腸に高い確率で発生します。

 大きさは数ミリから3?4センチ程度。5ミリ以上のポリープはがん化の可能性があり切除が必要です。そして、このポリープやがんを発見するために二つの方法があります。

 確実にポリープやがんが見つかる大腸内視鏡検査と、会社や市町村の検診で施行される便潜血検査です。
 しかし、便潜血検査は進行がんの10?20%、早期大腸がんの50%は陰性に出ることがあるので、注意しなければなりません。目に見える出血がなくても大腸がんということをしばしば経験します。

 胃や大腸などのがんは早期の段階では腹痛や出血等はありません。ただし大腸がんが進行してくると、「腹痛」「おなかが張る」「排便が不規則になる」「残便感」「便秘・下痢」「便が細くなる」といった症状が出てきます。また、痔と大腸がんが同時に存在することもあり、そこがポイントです。

 がんの中で大腸がんの死亡数は5年前より女性では第1位であり、男性でも3位です。大腸がんは早期に発見すれば、ほぼ100%近く治る時代です。
「痔と思っていたら実は大腸がん」だったというケースも増えています。「肛門から出血した」と受診された患者さんが、大腸がんでないことをしっかり確認するため大腸内視鏡検査を必ず受けましょう。

 50歳以上で高カロリーな食事を取る人や肥満、喫煙、飲酒、痔がある人、がんにかかったりポリープができたりした家族がいる人は最初から大腸内視鏡検査をするのが良いでしょう。
いずれにしても、大腸・肛門専門医の受診をお勧めします。