先生の医療記事新聞集
薬の「リスク」を認識しよう
読売新聞 ...
日本では、薬剤費が医療費の三割以上を占め、他国より多いことなどから、薬の使い過ぎが問題になっている。特に、抗生物質の使用量が、国民所得あたりに換算すると世界一と言われており、我々医療の側にも 反省すべき点は少なくない。
その反面、薬が好きな国民性があり、これも"薬漬け"の一因になっていると思う。
外来に来た患者さんに、病状を説明し、「こういう理由で、薬は必要ないのですよ」と話すのだが、二分の一ぐらいの方は不安な様子で、けげんそうに「薬はないのですか」と聞いてくる。
「三時間待って三分診療」などと言われる時代でもあり、遠方から一日がかりで来る患者さんが「せっかく来だのだから、薬くらいもらって帰りたい」と思う気持ちも、わからないではない。
だが、私は常々、「薬とは、本当に必要な時に、その症状や病態に合った適切なものを投与して、初めて効果が表れるものだ」と思っている。
現前は効果がある薬も、使い過ぎることで効かなくなり、「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」のようなやっかいな耐性菌が出てくることもある。
クスリは、逆から読めば 「リスク」(危険)とも読めるということを、医師も患者も、肝に銘じるべきであろう。