患者さんの為のQ&A
海外旅行後、下痢に原因と治療法は
朝食と緩下剤で排便促す
H20.7.23
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帰国後3日ほどで、猛烈な下痢になりました。
病院には行かないまま、3日ほどで治りましたが、便の中に血が混じっていたような気がします。
旅行先が東南アジアということもあり、心配です。
原因や治療法を教えてください。
また、8月にも海外旅行する予定ですが、海外で気をつけた方が良いことがあれば教えてください。(20歳代・男性)
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その主体は腸管感染症であり、衛生環境が未整備な地域で生水などを摂取することで感染するものです。
旅行者がかかりやすい最もポピュラーな疾患であり、海外の調査報告によると、発展途上国への旅行者の20から50%が下痢を経験するとされています。
病原微生物のうち、最も検出される頻度が高いのは病原大腸菌の一つである毒素原性大腸菌であり、これにサルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどが続きます。
これら病原微生物は、日本では食中毒の原因菌に分類される菌種です。
コレラや細菌性赤痢などの第2種感染症(以前の法定伝染病)が発見されることもありますが、頻度は低いです。
近年は、赤痢やコレラは軽症例が多く、病原大腸菌などとの鑑別が困難な場合も多いと報告されています。
旅行者下痢症の治療では、原因微生物を問わず、食事制限と水・電解質溶液の補給が重要です。
軽症例では、この指導だけで治癒に向かうことも多いですが、重症例では点滴静脈注射による補液療法が必要になります。
この場合、経口で水分を補給する場合には、市販されているスポーツ飲料を、煮沸した水で薄めて用いると良いといわれています。
薬物療法では、腸内の原因菌を減少させ、治癒までの期間を早める目的で、抗菌剤が使用されます。
抗菌剤投与時には、事前に原因菌を特定することが理想ですが、便培養には2・3日間が必要なため、初期治療では腸管感染症の原因菌に幅広く効果が期待できるホスホマイシンカルシウム(商品名・ホスミシンほか)やニューキノロン系抗菌剤が処方されます。
海外旅行の際には、鎮痛剤、かぜ薬、胃腸薬、下痢止めなどの使い慣れた薬を数種類持っていくのが基本です。
持病の薬を飲んでいる人は、もちろんそれも忘れずに持っていってください。
持病のある方や小さな子供連れに特にお勤めしたいのが「英文診断書」の携行です。
海外では言葉が通じないからと病院にかかるのをためらい、日本語の通じる病院を探すうちに手遅れになるケースが数多く報告されています。
その人の病気の状態がひと目でわかる診断書があれば、言葉の問題を心配することなく、適切な治療を速やかに受けることができます。